Starry Night Magic
ひとしきり君は支離滅裂に俺の悪口を言うと、いくらかは落ち着きを取り戻したようだった。
「君昔さ『俺理系で英語は超苦手、絶対海外に住むとか無理、旅行ですらそんなに行きたいとは思わない』って言ってたから、絶対私と付き合う気は無いんだと思ってた」
「え!?俺そんなこと言った!?」
「言ったよ、大学2年の夏に。私傷ついたからしっかり覚えてる」
さほど執念深く無い君がしっかりと覚えているというのは、よほど傷ついたということだろう。
俺は何の気無しに言ったに違いない。
しかも2年の夏は、君から海外に行くという話を聞く前だ。
そんな時の発言くらい勘弁してくれよ……とも思うが、本気で将来海外に行きたいとその頃から考えていた君には深く刺さる発言だったのだろう。
素直にごめん、と謝っておく。
「だから私、自分からは言い出せなかったの。
優しい君はもし私と付き合ったら、嫌いな海外にも努力して会いに来てくれるだろうから。
君には幸せになって欲しかったから、日本でしっかり家庭を守ってくれるような女の子と結婚して欲しかったから」
君はバケツの水がひっくり返ったように、心の中の言葉を一気にこぼした。
「だから帰国しても会わないようにしようって何度も思った。
でも休みが取れる、帰国できるって分かったときに、真っ先に会いたいって思い浮かぶのは君の顔で」
そう言って、涙ぐんだ目で君は僕を見上げる。
「ずっと帰国するたびに会ってくれる君に甘えてた。
君に彼女が出来たら会うのはやめようって決めてた。
でもそれまでは悪いことしてる訳じゃないからって自分に言い聞かせて」
君はそこで言葉を切った。
一呼吸ついて心を落ち着かせているようだ。
次にこの話の核の部分が来るんだろうと予想がついた。