Starry Night Magic
本編
「織姫と彦星ってもう充分に反省したと思うの」
ショッピングモールに飾られた笹の木を見上げながら、君は突然そんなことを言った。
君はいつも自分の頭の中の思考過程を説明せず、突拍子も無いことを言う。
はじめはそれに付いていくのにとても苦労したが、もう随分前に慣れてしまった。
眉根をきゅっと寄せて顎に丸めた人差し指を当てるその仕草は、君がいつも考え事をしている時にするものだ。
君さえ気付いていないかもしれないそんなことに俺が気付いたのも、もう何年前かは分からない。
君はくるりとこちらに体を向けて、俺を見る。
「だって七夕の伝説が語られ始めたのってもう千年以上も前でしょう?
天界の人たちは地上に生きる人間とは時の流れが違うのかもしれないけど。
でも1年会えないっていうのが程よく辛くて、でも会うために頑張れる時間ってことでしょう?
そしたら時間の感覚は私たちとそれほど違わないんじゃないかな」
君はひとりでどんどん思考を加速させていく。
俺はそんな時ずっと思ってきたことがある。
君の目を通して見ると、どんなに世界は違って見えるのだろうと。
現実主義な俺とは真反対の思考。
決して自分の感性が嫌いな訳ではなかったけれど、君のことは少し羨ましくもあった。