Starry Night Magic

新歓上映会では当時最新作だった2作目の『凍ったワイン』とともに、1作目の『凍ったコーヒー』も上映されていた。


2人の男女が河原や公園を歩きながら思い出を語っていたかと思えば、次のカットではてんとう虫や鳥の姿をカメラが追っている。



先輩たちはここのカットが最高だとか、てんとう虫と鳥の対比が美しいだとかその作品を絶賛していたけれど、私には難しくてその作品の良さは分からなかった。



上映会は今週末で、その前に部内発表会がある。

『エリダ姫と森の魔女』はもう完成していたが、他の作品はまだ完成しきっていないようで部内発表会は上映会の前日になりそうだった。


例に漏れず『凍ったウォッカ』もまだ編集作業中で、制作に関わっていない私はどんな作品なのかを全く知らない。



「すいません、私その作品には全く関わっていなくて……」



予想外すぎる質問だったけれど、自分から話しかけておいて質問に答えられなかったことを申し訳なく思った。



でもどうしてそんなことが気になるのだろう。


そうですか、そう言って彼は熱く見つめていた割にはあっさりと引き下がって、私に軽く会釈をする。



このままだと行ってしまう、そう思った私が咄嗟に彼の横顔に言葉を続けたのは、せめてもの名誉挽回なのか、少しでも長く彼と話したかったのか、その頃も今も分からない。
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