Starry Night Magic

「なるほど……だったら、ふたりを引き離した神様は大誤算だねぇ」


いや?娘に甘々なのかも?


まだまだ疑問は膨らむらしいが一応は納得したらしい。


私もお願い事書いちゃお、そう言って彼女は短冊の置いてある机を取り囲む子どもたちの中に紛れ込んでいく。


客が自由に願い事を書けるように笹の木の下に紙が用意されているのは、いつの時代も変わらない。



俺はもうすでに笹の木に吊るされた短冊を適当に眺めながら、彼女を待っていた。

28にもなって無邪気に願い事を書くところが君らしいなと思ったが、吊るされた短冊の中に意外と大人の字で書かれたものもあるからそんなに珍しいことではないらしい。




お金持ちになりたい かえで


1社で充分ですからどうか内定がもらえますように 伊藤拓真




短冊に願い事を書けば叶うなんて非科学的極まりない訳だが、そんなことにさえ頼ってしまいたくなる気持ちはさすがの俺でも理解はできる。


特に内定が欲しい彼に関しては、文字から切実な想いが伝わってくる。

確かに7月に内定が一社もないというのは、かなり焦るだろう。



順番に短冊に書かれていることを見ていくと、願い事を持った人がこんなにもたくさんいるんだなぁと感心してしまう。


俺は短冊なんて書かないにしても、こういうときにどんなことを願い事として思い浮かべるだろう?



「お待たせ、さあ行こ?」


いつの間にか君は願い事を書き終えて、もう笹の木に吊るしたらしい。

満足げな表情を浮かべて、横に並んだ君が俺の思考を現実に引き戻した。


「なんて書いた?」


すると君はいたずらに笑う。


「ナーイショ」


吊るす瞬間を見ていなかったから、君の短冊はどれか分からない。

君の身長から大体どのくらいの高さに吊るしたかは予想が付くけれど、本人が隠しているので無理に探そうとは思わなかった。
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