私が恋を知る頃に
ふと気がつくと、なにかとても温かいものに包まれていた。

なんだが頭がぼんやりする。

そっと目を開けると、朝日が差し込んでいて眩しかった。

「あ、穂海ちゃんおはよう。」

私を抱きしめてくれていたのは碧琉先生…。

あれ、私どうしてたんだっけ……

「昨日はそばにいれなくてごめんね。パニック起こしちゃったんだって?」

そうだ、息が苦しくて…

でも、その先が思い出せない。

「清水先生と佐伯先生が処置してくれたんだよ。まだ、外すと苦しいから酸素マスクはつけたままね。」

コクン

そっか、昨日はきっとそのまま気絶しちゃったんだな

昔もよくあった。

苦しすぎると、勝手に意識がなくなって、気がついたら次の日になっている。

徐々に、目が冴えてきて、それと同時に昨日のことも思い出してきた。

自分はみんなに迷惑をかけていて、ワガママばかりで、ここにいることが申し訳なくて、存在してることが申し訳なくて…

改めて思い出すと心が苦しくなる。

また泣きそうになって、ぎゅっと目をつぶった。

「どうした?何か、思い出しちゃった?」

コクン

「言いたくなかったら言わなくてもいいけど、苦しかったら言っていいんだよ。我慢はしないで。」

その優しい声が、とても温かくて…

いつもそうだ

先生の声は何故かとっても温かくて思わず喋ってしまう。

「わ、私…………ここにいて、ごめんなさい…
私が悪いのに…先生たちに迷惑っ、かけて…………ヒック……ワガママ言ってっ………悪い子でごめんなさい、迷惑かけてごめんなさい、産まれてきてごめんなさい…」

また涙が溢れてきてしまった。

迷惑かけるからダメなのに

泣いちゃダメなのに

我慢しなきゃダメなのに





なんて言葉を返されるだろう、そう思ってると、そっと先生は私をさらに抱きしめた。

「迷惑?ワガママ?穂海ちゃんはそんなことしてないよ。それに、穂海ちゃんは悪い子なんかじゃない。今まで、どんなことを言われてきたのか、俺らには想像もつかないけど…少なくとも俺らはそんなこと思わないからね。穂海ちゃんは、すごく頑張り屋のいい子だし、ワガママも言わないし、迷惑もかけてないよ。大丈夫。そんなに、自分を責めないで。」



迷惑じゃ、ない?

ワガママじゃない?

悪い子じゃない???

「でもっ!!私っ!!」

「"でも"じゃない。誰がなんと言おうと、穂海ちゃんはいい子だよ。迷惑なんてかかってないし、俺は穂海ちゃんに出会えて良かったから、産まれてきてくれて嬉しいよ。穂海ちゃんに出会えて嬉しいよ。……きっと、ずっとそう言われてきたから不安になっちゃうのかもしれない。でもね、不安になったら何度でも教えてあげる。穂海ちゃんは優しくて頑張り屋さんの素敵ないい子で、俺は穂海ちゃんと出会えて嬉しいんだよって。……自分を傷つけるのは、もうやめよう?もし、傷つけたくなったら、苦しくなったら、すぐ教えて。また、何度でも言うから。俺らは穂海ちゃんの事が大好きで大切なんだって。だから、そんな悲しいこと言わないでって。」
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