私が恋を知る頃に
注射を打ち、しばらく抑えていると薬が効いてきたのか、女の子の体の力が抜けた。

「ごめんね、少し抱っこさせてね。」

薬で朦朧としている女の子を抱っこして、病室に連れていき、ベッドに寝かせる。

ベッド周辺には、外れた心電図やら外された酸素マスクやら点滴やらが散らばっていた。

「瀬川くん、何度もごめん、点滴取ってきてもらえる?」

「はい、すぐ取ってきます。」

瀬川くんが点滴を取ってきてくれている間に、俺は心電図と酸素マスクを元通りに戻していく。

「ごめんね、嫌かもしれないけど、これ付けさせてね。体調が良くなったら、自由にしてあげられるから。」

さっき、暴れたからか、少しぐったりとした様子の女の子は、静かに涙を流し続ける。

「大丈夫だよ、俺たちは君を傷つけないからね。まだ、怖いのは承知だけど、ここは安心できる場所だからね。」

少しずつ声掛けをしながら、そっと女の子の脇に体温計を挟む。

ピピピピピッ

ピピピピピッ

熱は…35.6

まだ、全然低い。
湯たんぽ、ぬるくなっちゃったみたいだし、もう1回取りに行くか…

と思ったところで、病室に瀬川くんが戻ってきた。

「先生、点滴取ってきました。」

「ありがとう、助かるよ。」

そう言いながら、道具を受け取り、女の子の腕に駆血帯を巻き、消毒をする。

「ごめんね、少しだけチクッてするからね」

点滴の針を刺し、テープで固定をする。

「瀬川くん、俺、湯たんぽと毛布追加で取ってくるから、少し様子見ててもらえる?」

「えっ、俺取ってきますよ?」

「ううん、大丈夫。むしろ、女の子の担当になるのは瀬川くんだから、そばにいてあげて。」

「…わかりました。」

「ありがとう」

そう言って、俺は湯たんぽと毛布を取りに行くために病室を出た。
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