私が恋を知る頃に
屋上は鍵が空いていた。

久しぶりに動いたから、かなり息が切れて疲れたけど、ドアを開けて外に出ると少し肌寒い空気がとても心地よい。

屋上は、普段は昼間も開放しているのか、ベンチや花壇もあって、くつろげるスペースになっている。

私はその中のベンチのひとつに腰を下ろして空を見上げた。

冬は空がきれいだと聞いたことがあった。

理由はわからないけど、確かに沢山の星が輝くこの空はとても綺麗だと思う。

家からはこんなに見えなかったと思うけど、ここの場所はこんなに星が沢山見えるんだ。

また、ずっとここにいたいなという気持ちになる。

首が痛くなってきた頃、ふと病院の下を見てみたくなった。

きっと、こんなに綺麗な星が見えるんだからここは高い場所にあるんだろう。

そう思いつつ、柵に近寄る。

屋上からは、沢山のビルが見えた。

まだ多くの人が起きているのか、ビルの窓からは光が漏れていて、それが集まってキラキラ光る星のように見えた。

夜空も綺麗だけど、こっちもすごく綺麗。

この病院が、私の家からどのくらい離れているかわからないけど、初めてこんな景色を見た。

遠くにとても高い塔があるのも初めて知った。

いつかあそこに行ってみたいな。

あの塔の中はどうなっているんだろう。

階段がずっと上まで続いているのかな。

塔の1番上、先っちょの所は登れるのかな。

私のワクワクは止まらない。

初めて見る景色ばかりで、私は夢中になって外の景色を眺めていた。

柵に張り付くようにしてずっと長い時間そうしたままだった。
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