私が恋を知る頃に

穂海side

頭がぼんやりする

何が起こっているのか、よくわからなくなって、でも知らない人がいて、知らない場所にいて、すごく怖いことだけはわかった。

知らない人が、私の顔を覗き込んでいる。

私の手を握って、言葉をかけてくる。

「……大丈夫、大丈夫だよ。俺たちは何もしないからね。そんなに泣かないで…、怖いこと、しないから。」

すごく悲しそうな顔で男の人は私に語りかける。

「…大丈夫っていくら言ったって、怖いものは怖いよね……ごめんね。でも、俺には、君に声をかけてあげることしか出来ないんだ。少しずつでいいから、俺たちが怖い人じゃないこと、知って欲しいな。」

何かを必死に言われているけど、ぼんやりした頭の中では、怖いことが全てを占めていて、言われたことも頭に入ってこない。

なんで、どうして私はここにいるの?

あなたはだれ?ここはどこ?

家に返してよ

あそこは、私の居場所なのに

頭に言葉が浮かぶけど、何故か声は出ない。

というか…体に力が入らなくても、されるがままの状態だ。

とか考えていたら、急に体がポカポカと暖かくなってくる。

なんだろう、なにか、されたのかな?

何もしなくていいのに…

でも……なんだか、その暖かさが気持ちよくて…

目が自然と閉じていく……

寝ちゃダメなのに、帰らなきゃ行けないのに…

だんだんと視界が狭くなって………………
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