私が恋を知る頃に
ヒュッと息が詰まって目が覚める。

心臓がバクバクしていて、すごく汗もかいている。

時計を見ると、まだ夕方だった。

さっきの夢…痛いことはなかったけど、とても胸が締め付けられて苦しかった。

少し思い出すだけで涙が溢れてくる。

なんだろうこの苦しさは。

殴られたわけでも蹴られたわけでもない。

でも何故かすごく心が痛い。

首を絞められている時のように息が苦しい。

そして何より、とても悲しかった。




あの時、あんなに真正面からお母さんに『死んでくれ』と言われたのは初めてだった。

暴力の中の一環で男の人に「死ね」と言われるのは日常茶飯事だった。

でも、 あんな必死に言われたのは初めてで、とても混乱したし頭が真っ白になった。

そっか、私は死んだ方がいいのか。

そう思う度に涙が溢れ出す。

怖いとか嫌とかじゃなくて、ただただ悲しかった。

こんなにも私はお母さんに迷惑をかけている、お母さんを悲しませている。

私が死んだらお母さん幸せになれるのかな。

あんな風に泣くお母さんを見たらそう思うしか無かった。

でも、何度そう思っても自ら死ぬ勇気は出なくて、暴力を受けている時もまた、どこかで死にたくないと願う私がいた、そして毎回幸運にも生き延びてしまった。

私が生きていることがお母さんにとっての苦痛なんだ。

ならいっそ、お母さんの手で殺してよ…

何度そう願ったことか。

男の人からの暴力はいつも怖くて痛くて嫌だった。

でも、お母さんからの暴力は、いつも痛いことより悲しさが大きかった。

お母さんはいつも悲しそうに涙を流しながら私を叩く。

何度も『死んでくれ』と言いながら私を殴る。

死ねなくてごめんなさい。

死ぬ勇気がなくてごめんなさい。

きっと私が今生きていること自体が罪なんだ。

生きていてごめんなさい。

お母さんからの暴力は正当性があった。

だからきっとこんなにも悲しくなる。

こんなにも胸が痛くなる。
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