私が恋を知る頃に

穂海side

なんだろうここ

変な場所……

私は初めて見る不思議な光景に戸惑う。

しかし、一方で心は何故か落ち着いていた。

自分の周囲には花が咲き誇っていてでもその花がなにかわからない。

近くを川が流れていて、川の向こう岸には赤い花が咲き乱れていた。

ここ、どこだろう…

夢?

…………にしては、変な感じだけど…

妙な違和感をずっと感じる。

何かが変……

私がそれに気付くのに、さほど時間はかからなかった。

……空が、ないんだ。

空というか、空間の端がない。

ずっと続く花畑と川以外何も無い。

上も右も左もただ白1色で、でも機械的なのっぺりした白ではなくうっすらとぼやけたような白が広がっていた。

…………もしかして…天国?

私、死んだのかな…?

不思議と違和感はなかった。

むしろ、なんだか納得できそうなくらい。

でも、どうしたものか…

このほぼ何も無い空間で何をすればいいのかわからない。

適当に歩いてみるも、どこも同じような景色で飽きてしまう。

川の向こう岸へ行ってみようかな。

そしたら誰かいるかもしれない。

何か起こるかもしれない。

なんとなくそんな気がしてきた。

川には大きな木の橋がかかっていて、そこを渡ると向こう岸へ行けそうだった。

橋へ向かって歩きだそうとしたその時

唐突に何かに躓いて転んでしまった。

何かと思って見てみるも、特に花以外何も無い。

花のどれかに引っかかったのかな、と思いつつ再び足を進める。

すると、また何かに躓き転んでしまう。

もう、なんなの?

こんなに続けて転ぶなんてついてないな~

と思いまた歩きだそうとすると、何かが頭の中で引っかかった。

何か、忘れてる気がする。

何か大切なもの。

忘れちゃいけなかった気がするけど、思い出せない。

なんだっけ、あれ。

何故か、どうしても思い出さないといけない気がした。

そしてそれと同時に、橋の向こうへは行っちゃいけない気もしてきた。

それまでは、なんとも思っていなかった橋の向こう側が、何かとても不気味に思えて、赤い花が少し気持ち悪い。

連続で転んだのも、誰かがここへ留まるように言ってる気がした。

……なんでだろう、今の今までそんなこと微塵も思っていなかったのに。

"_________め、いっ____だ__。"

声だ。

誰かの声。

なんだっけ、この声。

すごく落ち着く声。

ずっとこの人のそばにいたいなって思ってた。

この声が聞こえると安心するんだ。

なんだっけ、なんだっけ。

"まだ____っちゃ、ダメだ。だって、___________"

だって……?

…なんだろう、無性にこの人に会いたくなってきた。

この人に会わなきゃ行けない気がしてきた。

どこにいるの、先生……

…"先生"?私が探してるのはどこかの先生なの?

学校の先生?塾?習い事?

いや……違う、どれも違う。

私が会いたい人は______










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