私が恋を知る頃に
「……穂海…ちゃん?」

ふと声のする方を向くと、驚いた顔の碧琉先生がいた。

なんでそんなにびっくりしてるんだろう

そう思っていると、先生は泣きそうな顔で私に抱きついてきた。

「穂海ちゃん…良かった……、本当…良かったっ……!!」

状況が理解出来ずにいるを他所に、先生は泣き続ける。

…大人の男の人がこんなに泣くのを初めて見たかもしれない。

よくわからなかったけど、とりあえず頑張って手を伸ばして先生の背中に手を置く。

すると、先生はさらに感極まったような顔をして私を強く抱きしめた。

「……穂海ちゃん、よく頑張ったね!!」

頑張る?………何を?

ぽかんとしていると、シャッとカーテンが開いて清水先生が入ってきた。

「おっ、穂海ちゃん目 覚めてる。良かった。おはよう。」

……コクン

なんでみんなそんなに驚くんだろう、頭にはてなを浮かべていると、察したのか清水先生が優しい表情で状況を説明してくれた。

曰く、私は一度死にかけたらしい。

そして、手術で奇跡的に助かったものの、しばらくの間目を覚まさなかった。

それで、みんな驚いてるって…

それを知って、私は少しだけ複雑な気持ちになった。

また、助かっちゃった……

先生たちが、一生懸命私を助けてくれたのはわかるし、本当にありがたいことだと思う。

…けど、今生きる意味を見いだせないでいる私にとっては、少し残念だった。

最低だとわかってるけど、そのまま死ねたら良かったのに…なんて、思ったりして……
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