私が恋を知る頃に

穂海side

目を覚ましてから、私はとにかく暇だった。

目が覚めた時のあの特別な部屋を出て、元々居た部屋に戻ってからも、特にすることがなかった。

前はやりたいことが沢山あったはずなのに、何故か何もやる気が起きなくて、体を起こすこともだるくて一日中寝てばかりいた。

寝ていて思い出すのは、いつもお母さんの言葉と顔。

毎日"死ね"と言われる夢を見た。

その度に、私はひどく悲しくなって涙がとめどなく溢れた。

あの日、あの夢を見て思い出してしまってから、徐々に心がおかしくなってきているのがわかった。

夢を見る度、おかしさが増していく。

何も無いのに突然泣きたくなって、涙が止まらなくなったり、何も無いのに急に息が苦しくなったり…

何も無いのに、ぼんやりとずっと死を考えるようになってしまった。

頭の中で"死にたい"と"死にたくない"が拮抗してる。

その間にも、ずっと"死ね"の声が聞こえる気がして頭が狂ってしまいそうだった。
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