私が恋を知る頃に
数分経って、来てくださったのは園田先生。

佐伯先生が病室の外で事情を話してくださると、そのままゆっくり穂海ちゃんに近付き声をかける。

「穂海ちゃん、急に来てごめんね。穂海ちゃんが苦しそうだって聞いてさ。どうしたかな。」

「やだっ!!やだやだやだっ!!」

「ごめんね、お話嫌だね。体も思うように動かなくて苦しいんだね。ごめんね。でも、ちょっとだけお話聞かせてね。」

園田先生はゆっくりしたペースのまま話を進めていく。

「まず、今何が嫌かな。もちろん、話したくないのかもしれないけど、それ以外に何が嫌?」

「全部っ!!全部いやああ!!もう嫌なのっ!!苦しいのっっ!!」

「うん。うん。苦しいんだね。辛いね。何が苦しいかな。心が苦しい?」

「全部…全部苦しいの……っ…………もう嫌なの…もう、もう…………」

そこまで言うと、穂海ちゃんは急に大きな声を上げて泣き始めてしまった。

園田先生は、その背中を優しくゆっくりと撫でる。

「苦しいね。辛いね。ごめんね、お話聞くしか出来なくって。好きなだけ泣いていいからね。よしよし。」

「やだあ…優しく、しないでっ……」

「うん。優しくされるの、嫌なんだね。どうして、嫌かな。」

「だ、だって…だって、私、悪い子だからっ……悪い子だから…っ!!」

「そうなの?どうして悪い子かな。」

「だってっっ、死ねない私は悪い子なんだもんっ。お母さんが私が"死ぬ"ことを望んでるのにっ、いつまで経っても死ねないのっっっ!!」

「うん。」

「死にたいのにっ!!怖くてっ、毎回っ怖くて……っ!!死ねないのっっ」

衝撃だった。

穂海ちゃんがそんなこと思っていたなんて…

「死ねない私は悪い子だからっ……だから、優しくしちゃダメなのっ!!」

そう言ってさらに泣く穂海ちゃんの姿はとても痛々しかった。
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