私が恋を知る頃に
「っ……!!でもっ…………でも…」
「うん」
「私………お母さんに嫌われたくないっ……いい子にしてたら…お母さん、きっとまた撫でてくれるもんっ!!だから…私は、いい子でいたいの……!!」
とても胸が締め付けられた。
穂海ちゃんは、昔にお母さんに頭を撫でて貰えたことが今でもずっと嬉しくて優しい思い出なんだ。
でも、お母さんが穂海ちゃんに当たるようになったあと、何をしても"いい子"にはなれなくて、穂海ちゃんが思いついた"いい子"はお母さんの言うことを聞く子だったんだろう。
それと、お母さんの発言が重なって今の心情に至るんだ……
お母さんに褒めてもらいたいがために、死のうとしてる。
死んでしまったら、お母さんにも会えないというのに、それでもお母さんの愛を必死に求めている。
愛に飢えているとはまさにこの事だと思った。
「…そっか。……穂海ちゃん、これは少し苦しい話かもしれない。けど、聞いてくれるかな?」
「…………なに」
「うん。……もし、今、穂海ちゃんが死んじゃったとしよう。苦しくて、辛くて、お母さんに褒めてもらいたくて死んじゃったとする。…でもね、お母さんはそれを本当に褒めてくれるかな。褒めてくれたとしても、それは本当に穂海ちゃんが心の底から喜べることかな。そして、もし穂海ちゃんが死んじゃった時、お母さんが褒めてくれなかったらどうする?死んじゃったら、もう元には戻れない。生き返ることも出来ないし、見たり聞いたりすることも出来なくなっちゃう。……それでも、穂海ちゃんは死を選ぶ?」
「…っ、でもっ……でも、でも…………」
穂海ちゃんの両目からは涙がとめどなく溢れている。
「っじゃあ、どうしたらいいのっっ!!どうしたらいいって言うの!!!!私はただ、褒めて欲しいだけなのに…お母さんに……いい子だねって頭を撫でて欲しいだけなのにっっ…………私そんなに贅沢なこと願ってる?学校のみんなも、すれ違った人たちもみんな、みんな嬉しそうだった…、お母さんお父さんに褒められて、楽しそうにおしゃべりして笑ってた……、私はそんなことも許されないの?普通のみんなみたいにはなれないの?」
穂海ちゃんの息が上がっていく。
過呼吸を起こしそうだ、思わず駆け寄ろうとすると佐伯先生の手で止められた。
「穂海ちゃん、よく聞いてね。今は上手く飲み込めなくてもいい、ゆっくり時間をかけて消化して欲しい、とっても残念で、苦しい話だけどね…………穂海ちゃんがお母さんや、お父さんに褒められて楽しく暮らせる未来はもう来ないんだ。」
「え……」
「この前の事件で、警察が動いたことで、穂海ちゃんのお母さんと男の人は今、刑務所の中だ。刑務所からは、数年経って罪を償ったら出れるよ、でもね、警察の保護命令って言うのがあって、それでお母さんと男の人は何年も穂海ちゃんに近付くことも許されないんだ。これは、穂海ちゃんの命を守るための決まりでね、これが切れるのは何十年後になる。」
「……………」
穂海ちゃんの顔から表情が消えていく。
いつかは、この事実を伝えないといけないと思っていたけど…いざ目の前にすると、見ているこっちが辛くなるような景色だ。
「…苦しい話だと思う。……でも、穂海ちゃんならいつか飲み込んでくれると思って話したんだ。」
「じゃあ……、じゃあ…私はもう独りなの?…………ずっと独りぼっちなの?もう、誰もそばに居てくれないの?」
ぽつりぽつりと零す言葉と共に、涙がパタパタとシーツにおちる。
「それは違う」
思わず声が出ていた。
穂海ちゃんが驚いたように顔を上げる。
「前に話したこと、覚えてるかな…、なんかもうずっと昔のような気がするけど______________」
「うん」
「私………お母さんに嫌われたくないっ……いい子にしてたら…お母さん、きっとまた撫でてくれるもんっ!!だから…私は、いい子でいたいの……!!」
とても胸が締め付けられた。
穂海ちゃんは、昔にお母さんに頭を撫でて貰えたことが今でもずっと嬉しくて優しい思い出なんだ。
でも、お母さんが穂海ちゃんに当たるようになったあと、何をしても"いい子"にはなれなくて、穂海ちゃんが思いついた"いい子"はお母さんの言うことを聞く子だったんだろう。
それと、お母さんの発言が重なって今の心情に至るんだ……
お母さんに褒めてもらいたいがために、死のうとしてる。
死んでしまったら、お母さんにも会えないというのに、それでもお母さんの愛を必死に求めている。
愛に飢えているとはまさにこの事だと思った。
「…そっか。……穂海ちゃん、これは少し苦しい話かもしれない。けど、聞いてくれるかな?」
「…………なに」
「うん。……もし、今、穂海ちゃんが死んじゃったとしよう。苦しくて、辛くて、お母さんに褒めてもらいたくて死んじゃったとする。…でもね、お母さんはそれを本当に褒めてくれるかな。褒めてくれたとしても、それは本当に穂海ちゃんが心の底から喜べることかな。そして、もし穂海ちゃんが死んじゃった時、お母さんが褒めてくれなかったらどうする?死んじゃったら、もう元には戻れない。生き返ることも出来ないし、見たり聞いたりすることも出来なくなっちゃう。……それでも、穂海ちゃんは死を選ぶ?」
「…っ、でもっ……でも、でも…………」
穂海ちゃんの両目からは涙がとめどなく溢れている。
「っじゃあ、どうしたらいいのっっ!!どうしたらいいって言うの!!!!私はただ、褒めて欲しいだけなのに…お母さんに……いい子だねって頭を撫でて欲しいだけなのにっっ…………私そんなに贅沢なこと願ってる?学校のみんなも、すれ違った人たちもみんな、みんな嬉しそうだった…、お母さんお父さんに褒められて、楽しそうにおしゃべりして笑ってた……、私はそんなことも許されないの?普通のみんなみたいにはなれないの?」
穂海ちゃんの息が上がっていく。
過呼吸を起こしそうだ、思わず駆け寄ろうとすると佐伯先生の手で止められた。
「穂海ちゃん、よく聞いてね。今は上手く飲み込めなくてもいい、ゆっくり時間をかけて消化して欲しい、とっても残念で、苦しい話だけどね…………穂海ちゃんがお母さんや、お父さんに褒められて楽しく暮らせる未来はもう来ないんだ。」
「え……」
「この前の事件で、警察が動いたことで、穂海ちゃんのお母さんと男の人は今、刑務所の中だ。刑務所からは、数年経って罪を償ったら出れるよ、でもね、警察の保護命令って言うのがあって、それでお母さんと男の人は何年も穂海ちゃんに近付くことも許されないんだ。これは、穂海ちゃんの命を守るための決まりでね、これが切れるのは何十年後になる。」
「……………」
穂海ちゃんの顔から表情が消えていく。
いつかは、この事実を伝えないといけないと思っていたけど…いざ目の前にすると、見ているこっちが辛くなるような景色だ。
「…苦しい話だと思う。……でも、穂海ちゃんならいつか飲み込んでくれると思って話したんだ。」
「じゃあ……、じゃあ…私はもう独りなの?…………ずっと独りぼっちなの?もう、誰もそばに居てくれないの?」
ぽつりぽつりと零す言葉と共に、涙がパタパタとシーツにおちる。
「それは違う」
思わず声が出ていた。
穂海ちゃんが驚いたように顔を上げる。
「前に話したこと、覚えてるかな…、なんかもうずっと昔のような気がするけど______________」