私が恋を知る頃に
泣き疲れて眠ってしまった穂海ちゃんに布団をかけて、そっと病室を出る。

時刻は午前1時

伸びをして肩がバキバキ鳴るのをききながらナースステーションへ向かう。

「お疲れ様です」

数人の夜勤の看護師さんと挨拶を交わしつつ、カルテを手にしてそのまま医局へ向かう。

医局に入ると、医局内の休憩室で佐伯先生と園田先生が話してる声が聞こえた。

「お疲れ様です。さっきは、本当ありがとうございました。」

「おー!お疲れお疲れ!」

「大変だったね~、とりあえず何も無くて良かった」

この時間で、さっきのことがあったあとでもケロッといつも通りの先生たちを見てると少し安心する。

何か無意識に張り続けていた緊張の糸が緩んだ気がした。

「瀬川も、ここ座れば?だいぶ疲れたでしょ、コーヒー飲む?」

「お言葉に甘えて。」

佐伯先生の隣に腰をかけ、テーブルの上にあるお菓子に手を伸ばす。

お気に入りのお菓子のひとつであるアーモンドチョコを取って口に放り込んだ。

甘ったるすぎないビターチョコが心を癒す。

「瀬川くんそれ好きなの~?」

急な声に驚く。

ぼーっとしてた。

「あ、はい。甘すぎなくて糖分も取れるし、リラックス出来るので好きなんです。」

「へえ~、僕甘いの苦手だからな~、僕のお気に入りはこれ!」

そう言って園田先生が見せてくれたのは、巷で話題になっている激辛スナックだった。

俺も1度食べてみたが、辛すぎて無理だった代物……

なんというか…意外。

園田先生はふわふわした雰囲気だから、もっと綿菓子とか好きそうなイメージだった。

「これ美味しいんだよ~!最近、ここまで辛いお菓子売ってなかったからさ~、発売中止になったら嫌だから箱買いしちゃった!」

目をきらきらさせて喋る様子を見るに、相当好きみたいだ。

「なになに~、おっ出た日翔の激辛ぽてち!いつみてもお前の雰囲気と合わないよな」

園田先生、"ひかる"って名前なんだ。

と新たな情報に驚きつつ、佐伯先生の話に頷く。

大いに同意だった。

「園田先生、優しい雰囲気だから甘いものとか好きなのかと思ってました」

「え~甘いものはきらーい。フルーツならまだいけるけど、お砂糖とかチョコとかは苦手かな~」

その後も他愛もない話は続き、特に急患もなかった俺たちはしばらく話した後、順番に仮眠に着くことにした。

今日は、大変だったけど色々発見もあってとても濃い1日だった。

いつの間にか痛めていた腰を伸ばしつつ伸びをして俺は眠りについた。
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