私が恋を知る頃に
結果から言うと、予想通り虫垂炎だった。

痛みも酷いようだし、オペ室も空いていたので緊急手術となった。

瀬川くんは、痛みだけでなく恐怖も混ざりさらに青い顔をしていた。

「大丈夫だよ。麻酔はすぐ終わるし、手術自体も1時間くらいで済むからさ。」

「はい……」

痛みで動けない瀬川くんを車椅子に乗せオペ室へ向かう。

「執刀も、陽向のつてで腕のいい先生指名させてもらったから。」

「…はい」

瀬川くんの緊張かげんについ苦笑いしてしまう。

「変わってあげることはできないけど、応援してるからさ、ちょっとだけ頑張っておいで」

そう背中を撫でる。

何だか今の瀬川くんは、同じ職場の後輩というより、まだ高校生だった頃の瀬川くんを彷彿とさせる。

もうすっかり大人だと思っていたけど、こういう面を見るとそう言えば朱鳥と同い年だったなあ、と思う。

年の離れた弟を応援するような気分だ。

色々考えているうちにオペ室の前に着く。

待っていた看護師さんに申し送りをして、俺は瀬川くんを見送った。
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