私が恋を知る頃に
「瀬川、瀬川」

「ん……」

重い瞼を開くと、マスク姿の杉山先生がいた。

「終わったよ。お疲れ様。寝ていいよとは言ったけど、まさか本当に寝るとはね。気座ってんな。」

まだ少しぼーっとする意識の中、杉山先生が何か動いていることだけがわかる。

「ストレッチャーに移すよ。それから回復室で少し休んでから病棟上がるからな。」

「……はい」

かけ声と共に体が持ち上がる。

ストレッチャーに移され、景色が動く。

しばらく移動したあと、またかけ声があって、ベッドに移った。

「おつかれ。…最近、忙しかったみたいだし疲れとかストレスもあったんだろうな。今回のは災難だったけど、休める機会を貰ったと思って充分体休めろよ。そんで、来週からはバリバリ働け。清水先生に迷惑かけたらタダじゃ置かねえからな。」

そう言うと、杉山先生は俺の頭をポンポンと撫でてからどこかへ行ってしまった。

先生実はめちゃめちゃ優しい…

……杉山先生がみんなに慕われる理由が分かった気がした。
< 144 / 282 >

この作品をシェア

pagetop