私が恋を知る頃に
そこから一時間ほど経ち、病室に移動するために看護師さんが点滴やモニターを外してくれている時、カーテンが開いて清水先生が入ってきた。

「お疲れ様。ちょうど昼休みだから様子見に来たんだけど、調子どう?」

「…はい、お陰様でだいぶいいです。」

「ならよかった。まだ、しばらくは少し辛いと思うけどしっかり体休めてね。」

「ありがとうございます。……そういえば、穂海ちゃん今日どうでしたか、体調とか精神面とか…」

そう言うと、清水先生は苦笑いをしてベッド横の椅子に座る。

「ほんと、瀬川くんはまじめだね。自分の体調が悪い時くらい考えなくてもいいのに。ましてや、手術終わったばっかりなんだからさ。」

「はい……、でも昨日のことがあるからどうしても気になってしまって…」

「まあね、気持ちがわからなくもないけど。…今日回診行った限りでは、そこまで変わった様子はなかったよ。少し微熱があったけど、気にならない範囲。何かあったらちゃんと報告するから、今は自分のことを第1優先にしてね。」

そう言って、また頭を撫でられる。

「はい、わかりました。頑張って早く復帰できるようにします。」

「だから、頑張らなくていいんだって。ゆっくり休んで」

ははっと清水先生は笑って、さらに俺の頭をわしゃわしゃっと撫でる。

今日はなんだか、子供扱いされがちだな。

まあ、正直少し安心するけど。
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