私が恋を知る頃に
コンコンッ

いつもの回診の時間じゃない時にドアがノックされる。

……何かな

少し緊張しつつも返事をする。

「…はい」

「こんにちは、精神科の園田です。入ってもいいかな。」

園田先生…この前の優しい先生か……

「うん…」

「ありがとう、失礼します。」

ドアが開いて、先生が入ってくる。

なんだろう、何かあったのかな…

「突然ごめんね、この前のことがあったから少しだけ様子見に来たんだ。なにかする訳じゃないから、そんなに身構えないで」

「……うん」

にっこり笑った先生は、持ってきていた鞄をゴソゴソと漁ってカルテと巾着をとりだす。

「少し、お話してもいいかな。難しいお話じゃなくてね、お菓子持ってきたから一緒に食べながらお話しない?」

そういうと、先生はさっきの巾着から机の上にお菓子を広げる。

見たことないお菓子ばっかり。

「ちゃんと、清水先生に許可は取ってるから好きなだけ食べていいからね。ここら辺が甘いヤツで、こっちはしょっぱいやつ、あとこれはすごい辛いやつだから、苦手だったら避けてね。」

そう言うと、先生はまっさきにその辛いやつを取って袋を開ける。

「穂海ちゃんも好きなのどうぞ」

「……これ、なに」

甘いヤツコーナーにあった、白くて丸と四角の間みたいな形のやつを取る。

「あぁ、それはマシュマロだよ。甘くてふわふわしてるやつ。」

袋を開けて、指で取り出してみると確かにふわふわしている。

思い切って口に入れてみると、甘い味が口いっぱいに広がった。

「…これ、おいしい」

「そう?なら、よかった。いっぱいあるから好きなだけ食べていいからね。」

私は、たくさんの知らないお菓子を食べた。

マシュマロ、マフィン、ラスク、カヌレ

なんだか難しい名前で覚えるのが大変だったけど、こんなにおいしい食べ物があるんだなって知った。

先生とのお話は、なんてことなくて、最近の何してる?とか、ご飯は何が好き?とかそんな感じだった。
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