私が恋を知る頃に
「っっっ…!!」

息が苦しくてハッと目を覚ます。

見渡すと、そこは見慣れた病室で、今見ていたものが夢だったことに安堵の涙が出る。

でも、それと同時に息が上手くできないことに気付く。

上手く息が吸えない…

涙目になりながら、私はナースコールを押した。

でも、しばらくしても誰も来てくれなくて、本当に先生たちが私を見放してしまったのかと不安になる。

そんなことはない、きっと大丈夫。

きっと、忙しいだけ。

大丈夫

大丈夫

すぐ来てくれる

そう言い聞かせるも、体は言うことを聞かなくて、さらに息が苦しくなる。

頭がガンガンと痛んで、視界がぼやけて来る。

涙が止まらない。

先生、早く来て

怖い、私死んじゃうの?






その時だった。

「穂海ちゃんっっっ!!」

「っ……へ、き…………」

「喋らなくていいから。ごめんね、来るの遅くなった。苦しいね、もう来たから大丈夫だよ。酸素マスク付けるからね。」

なんで、碧琉先生が?

碧琉先生は来週までお休みだって

服装も、私と同じ病院服だし

そんなことを考えているうちに、酸素マスクや、色んなコードが貼り付けられる。

「ごめんね、呼吸確認するためのモニターつけるね。少し心を落ち着かせるお薬も入れるからね。痛くないから大丈夫だよ。」

テキパキと処置をされ、背中をさすられる。

「大丈夫、大丈夫。もう大丈夫だよ。ごめんね、怖かったね。」

そう言って抱きしめられる頃には、だいぶ呼吸は落ち着きを取り戻しかけていた。

「っ先生、なんで?」

「何でって?何が?」

「だって……先生、具合悪いんじゃ…」

そう言うと、碧琉先生は困ったように笑って、私の頭をくしゃくしゃっと撫でてくれた。

「ははっ、まあ一応ね。まだ念の為入院してるけど、もう元気だから大丈夫だよ。穂海ちゃんが苦しんでるけど、穂海ちゃんの知ってる先生が全員ちょうど居ないか手放せなくて来れないってナースさんから連絡受けてさ。いてもたってもいられなくなって来ちゃった。」

「でもっ…本当に大丈夫なの?」

「うん。大丈夫。もう、あとはリハビリして復帰するだけだし、穂海ちゃんに何かあった方が危ないからね。」

そう言ってくれる先生はすごく暖かくて、久しぶりの碧琉先生の匂いは何故かとても私の心を安心させた。
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