私が恋を知る頃に
病室に付き、俺はベッドに清水先生は椅子に座ると、先生はおもむろに口を開く。

「ごめんね、その体で働かせちゃって…、できるだけ当直は穂海ちゃんの対応に当たれる先生を1人は居れるようにしてたんだけど、今日は俺が急患で手術入らないと行けなくなっちゃってさ…、本当にごめん。瀬川くんが来てくれたからよかったけど、もう少し遅かったら危なかった…。今回は、本当に俺のミスだ。ごめん。」

先生はそう言って深々と頭を下げる。

でも、今回の事は正直誰も悪くない。

清水先生が急患の対応に当たることは、当然だし、仕方がない。

穂海ちゃんの今回のパニックも、予想がつかなかったから、誰も対策を出来なかった。

「先生は悪くないです。…今回はタイミングが悪かったんです……、穂海ちゃんも大事には至らなかったので、そんなに謝らないでください…。」

そう言うと、清水先生は悲しそうな表情のまま、ギュッと唇を噛んだ。

「…今回はたまたま幸運だった。瀬川くんが駆けつけてくれたから助かった。…でも、そうじゃなかったら穂海ちゃんは助からなかったかもしれない。……一度でもこんな状況を作りだしてしまったのは完全に俺のミスだ。…穂海ちゃんを命の危険に晒してしまった。本当に申し訳ない。穂海ちゃんの主治医としても、瀬川くんの指導医としても失格な行為だった。」

初めて見る、清水先生のそんな表情に俺はなんと声をかけていいのかわからなかった。

"大丈夫"とは気安く言えない

でも、清水先生を責めることもできない

今回は運が悪かった、しょうがなかった

それで済まされるとは思わないけど……

「もう過ぎたことです。今、悔やんでも何にもなりません。先生は十分対策をしてくださっていた。でもそこに俺が抜けたことやたまたま急患が入ったりするトラブルが重なってしまった結果、こうなってしまった。…なら、もうしょうがないんです。今、それを悔いるより次に同じことがないようにすればいい。だから、そんなに責めないでください。」

「瀬川くん………」

「俺が抜けて、先生がどれだけ俺の分の仕事までやってくれたかと思うと頭が上がらないです。忙しい中、当直も俺に代わって出てくださって……。先生がどれだけ忙しくしてくださっていたのか、今日だって2日連続で当直されてるし…、先生本当に迷惑をおかけしてしまってすみません。俺の方こそ、先生に謝りたいです。」
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