私が恋を知る頃に
そこからしばらく沈黙が流れた。

鼻をすする音が聞こえて、見ると清水先生が泣きそうになっていた。

「…ごめん、体辛いのに気使わせて。体調悪い時くらいゆっくり休んでって言ってカッコつけてたけど、正直しんどかったんだ。小児も年々医者が減っていくし、でも仕事量は増えていって……久しぶりに、少し気持ちが弱ってた。…ありがとう、そんな優しい言葉くれて。なんだか、弱ってるからか久しぶりにうるっときちゃった。かっこ悪いね…」

そう言って、清水先生は少し笑って涙を拭った。

「心配かけたね。…もう大丈夫。今ので気持ちの切り替えできた。今度こそ、大丈夫だから、あと1週間もないと思うけど、ゆっくり体休めてね。来週になったら、またバリバリ働いてもらうよ。」

そう笑った清水先生の顔は晴れやかで、スッキリとした表情をしていた。
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