私が恋を知る頃に
お昼

また回診じゃない時間にドアがノックされた。

「はい」

返事をすると、「失礼します」という声と共にドアが開く。

「こんにちは。また、遊びに来ちゃった」

そう言って笑ったのは園田先生。

手にはまたお菓子の袋。

そうだ、園田先生になら朝のドキドキした気持ち何かわかるかな…

園田先生、精神科って言ってたからきっと詳しいと思うし……

「ん?どうしたの、穂海ちゃん。そんなに思い詰めた顔して。」

考えていたのが顔に出ていたのか、そう聞かれる。

「…先生、少し聞きたいことがあって……」

「なあに?何でも聞いていいよ。」

そう言って笑ってくれた先生に、私はゆっくりと心の内を話しはじめた。











「んー、そっか。ドキドキしたり、ずっと考えちゃうのか…」

「…うん……」

「なるほどね。…多分ね、」

先生は微笑んだまま、口を開く。

「それは、恋じゃないかな?」

こい?

こいってあの"恋"?

これが、恋?

じゃあ、ドキドキしたりずっと考えちゃうのは全部…

「穂海ちゃん、瀬川くんのこと好きなんだね。」

顔が真っ赤になるのを感じる。

「初恋かな?」

……コクン

「ふふっ、顔真っ赤。そっか、そっか。良かったね」

何が良かったのかわからないけど…

とにかく、何か恥ずかしくて照れくさい。

「乙女だね~」

園田先生はずっとニコニコしていて、余計恥ずかしくなる。

「……でもさ、穂海ちゃんが好きだと思える人が出来て良かった。」

「え?」

「なんでもないよ。」

先生はそう言って誤魔化したけど、本当はちゃんと聞こえていた。

先生、私のこと心配してこうやってお話に来てくれていたのかな。

「…先生」

「ん?どうした?」

「……これからも、また、相談乗ってくれる?」

そう言うと、先生は笑顔で頷いた。

「もちろん。いつでも聞かせて。僕も聞いてるだけで楽しいから」
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