私が恋を知る頃に
目が覚めると、昔の家にいた。
毎日が辛くて苦しかった頃。
私の体は何日もお風呂に入れてもらえないせいでベタベタ。
気持ちが悪くて、たまにお母さんも男の人も居ない昼間にこっそりシャワーだけ浴びていた。
あんまり水を使うとバレるから本当にこっそり。
冷たいのを我慢しながら、少しの水で体を流す。
夏は、暑いからまだ良かったけど冬にこれをやるのは毎回寒くて死んじゃいそうになっちゃうからたまにだけ。
こっそり、こっそり。
絶対バレちゃいけない。
バレたらまた酷く怒られるから。
でも、私はやっぱりとことん運が悪いから、途中で階段を上る足音が聞こえてきた。
私は急いで、水を捨てて服を着る。
バレたら酷いことをされるのが分かっているから、心臓はバクバク。
焦るあまり、水に滑って転んでしまう。
ああ、こんなことしている暇ないのに。
早く早く早く
服を着ている最中、ドアが開く音がした。
終わった…
心の底で絶望を感じた。
服を着て出ていっても、ここに居たことがバレて怒られる。
怒られることに対する恐怖で私の足はすくみ体は震えてきた。
もう、これから怒られる事実は変わらない。
だから、できるだけ見つからないように…
今思えば、そんなことをしたらより一層怒らせるだけなのに、私はバスタオルを頭からかぶり洗面所のドアに背を向けるようにして隅っこで縮まった。
いやだな、いやだな
怒られるの怖いな
今日はどんなことされるんだろう
痛いのいやだな
足音がどんどん近付いてくる。
そしてついに、洗面所の扉が開いてしまう。
「あ?てめえ、こんなとこで何やってんだ」
案の定、直ぐにバレてしまって襟を捕まれそのままリビングに引きずられる。
リビングの隣の部屋
畳の引いてある部屋にそのまま投げ入れられる。
いつも、痛いことをされるのはこの部屋だ。
体が宙に浮いて、それから畳に叩きつけられる。
「……っっ」
痛いけど、このくらいじゃ声はあげれない。
男の人は、私の体と髪の毛が少し濡れてるのを見て不機嫌そうにタバコに火をつける。
「何てめえ勝手に風呂なんか入ってんの?前に言わなかった?てめえの分際で水なんか使ってんじゃねえって。金かかんだよ。金。タダじゃねえんだわ。」
そう言いながら、男の人は何度も何度も蹲る私を蹴る。
「なにか言えよクソガキ。黙ってんじゃねえよ。」
お腹に思いきり蹴りが入れられる。
「っっ……」
何か言ったら更に火に油を注ぐだけだ。
何も言わないように固く口を結ぶ。
でも、言わなきゃ言わないで酷いことをされるのは分かっていた。
それでも…何か言うよりはましだから。
「あーはいはい、お得意の黙りですか。いいご身分だこと。平日の昼間から働くわけでもなくずっと家にいて、勝手に風呂まで入って。…こっちが必死こいて働いてるっていうのによお。」
そう言うと、男は一瞬どこかに向かう。
男が居なくなった隙に、息を整えてまた体を丸くする。