私が恋を知る頃に
「本当に腹立つな。なんで俺らがてめえのために金払わないといけない訳?存在してるだけで迷惑だっていうのによお。」

男の蹴りはどんどん強くなっていく。

痛いな…、怖いな……

「死ねよまじで。なんでてめえを殺したら俺らが悪くなるんだろうな。悪いのはてめえが存在してることなのにな。」

胸ぐらを掴まれて、思いきり壁に打ち付けられる。

「何とかして勝手に死んだことになんねえかな。」

何度も何度も壁に頭を叩きつけられる。

頭がグラグラする。

視界が歪んで気持ち悪さで吐きそうだ。



すると、気持ち悪いくらい急にピタリと男の手が止まった。

男は、また私を置いて一度どこかへ行くと、ニヤニヤした顔で戻ってくる。

男は私の襟を掴んで引っ張ると風呂場に放り込んだ。

いつの間にか、バスタブにはなみなみと水が貯められている。

なんとなく嫌な察しがついた。

「そんなに風呂入りたいんだったらよお、好きなだけ入れてやるよ。」

ニヤニヤした顔の男はそう言って私の頭を掴むとそのまま、バスタブに頭を沈めた。

急なことで、訳が分からず水を吸い込んでしまう。

鼻と喉の奥に水が入ってきて痛い。

息が出来なくて苦しい。

どうにか逃れようと暴れるも、男に押さえつけられて動けない。

「ははっ、良かったなあ、風呂に入れて。髪まで洗えるなあ。」

男は私の頭を掴んだまま呑気にそんなことを言う。

必死に息を止めて我慢するも、苦しくて本能的に水を吸ってしまう。

「そろそろ死ぬか?」

そう言うと、強制的に顔をあげさせられる。

「…ゲホッ、ゴホッ」

「おら、もう1回ー」

ろくに息も吸えないうちに再び頭を水に入れられる。

あ、これすごく怖い……

息が出来なくて鼻の奥も喉の奥も痛くていつまでこの苦しみが続くのかわからない恐怖が身体を震わせた。
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