私が恋を知る頃に
「……ちゃん、穂海ちゃん」

ハッと目を覚ますと、そこは見なれない天井。

あ、そうか…私、施設に来て……

心臓がバクバクいっている。

さっきのが夢だったことがわかり、緊張が緩まる。

荒い息を、ゆっくり整える。

大丈夫、ゆっくり、焦らず…

だいぶ落ち着いた頃に、職員さんが声をかけてくれた。

「大丈夫?…凄い魘されてたみたいだけど……」

私は小さく頷く。

「ごめんなさいね、すぐ来ようと思ってたんだけど少し長引いちゃって。片付け終わって暇だったよね。」

「…大丈夫です。」

そう言うと、職員さんは一瞬困ったような表情をしてから、すぐに笑顔に戻った。

「体調が大丈夫なようだったら、施設の中を案内しようと思っていたの。これから毎日使うから、一通り知っておいた方がいいでしょ?」

コクン

「…行ける?」

「はい。大丈夫です。」

私は、少し痛む頭を無視してベッドから立ち上がった。

少しふらついてしまうも、すぐに立ち直す。

「じゃあ、行きましょうか。」

そう言った職員さんの後ろを着いて私は部屋を出た。
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