私が恋を知る頃に
ふと視線を感じ、見るとくるみちゃんが私の絵をじっと見ていた。

「…ど、どうしたの?」

そう聞くと、くるみちゃんは立ち上がってどこかへ走って行ってしまう。

……聞いちゃまずかったかな…

少ししゅんとしていると、また足音がしてくるみちゃんが走ってきた。

「…………これ」

そう言って渡されたのは、ピンク色の表紙に女の子が描かれた絵本。

くるみちゃんは、その絵本のページをめくると、あるページを指さした。

「あっ…」

そのページに居たのは、私の描いた女の子。

そっか、私が描いてたのはこのキャラクターだったんだと気付く。

「…この子、好きなの?」

そう聞くと、くるみちゃんは目をキラキラさせてコクンと頷いた。

「あら、じょうずね~」

そういったのは、施設を案内してくれた職員さん。

「これ、このアニメのキャラクターでしょ?一目でわかるわ、絵 上手なのね。」

そう言われると、何だか少し恥ずかしくなる。

「くるみちゃんも、このアニメ大好きだもんねえ。暇があればDVDを見てるし、毎日のようにこの絵本も読んでるしね。」

「うん」

くるみちゃんは、とても嬉しそうにまた絵本をめくり始める。

相当好きなんだな。

さっきまであまり表情の出ない子だと思っていたのに、この話になった途端目が輝き出した。

「あのね、あのね、この子ね まほうつかいなんだよ」

キャラクターを説明してくれる口ぶりもとても明るく、楽しそうだ。

一通り説明が終わると、今度はまた別の絵本を持ってきて説明をしてくれる。

楽しそうな笑顔がとても可愛かった。
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