私が恋を知る頃に
「…よかったわ」

みんな、おやつの時間になって、私は一度部屋に戻ることになった。

部屋に帰る途中、職員さんは微笑みながらそう言った。

「……何が…ですか」

そう言うと、職員さんは少し寂しそうに眉を下げた。

「くるみちゃんね、半年前にここに来たのだけれど…、あまり心を開いてくれない子でね……、いつも今日みたいに1人で絵を描いているか、さっきのアニメをじっと見ているだけなのよ。」

「…………」

さっきのくるみちゃんの姿は、職員さんが語るくるみちゃんとはかけ離れていた。

「だからね…あんなに、楽しそうに笑うくるみちゃん初めて見て嬉しかったの。くるみちゃん、あなたのこと凄く喜んでいたみたい。」

私のことを喜んでくれた…?

「穂海ちゃんのおかげね。ありがとう。」

私の…お陰……





私のお陰、私のお陰…

頭の中で何度もその言葉が反芻する。

心がぽかぽかと暖かくなった。
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