私が恋を知る頃に
ハッと目を覚ますと低い天井。

……夢か

周りを見渡して施設にいるんだなと改めて認識する。

びっしょり汗をかいていて気持ち悪な。

まだ真っ暗なことを見ると、多分夜中だろう。

みんなを起こさないように、そっとベッドから降りて引き出しからタオルを取った。

額の汗を拭いてから、寝る気になれなくてタオルを握りしめたままベッドに寝っ転がった。



あーあ、嫌になっちゃうなあ。

嫌な夢を見た。

過呼吸を起こすような恐怖の気持ちは小さかったが、悲しくて苦しい気持ちがいっぱい残った。

他の人よりも出来ないことが悔しくて、自分でも辛いのに他の人に指摘されると本当に悲しい気持ちになった。

私が悪いんだって

私が頑張らなかったから

……でも、でもさ…

生きることで必死だったのに、なんでそんなこと言うのかなあ

もし、私が普通の家に生まれてたらなって思うんだ。

普通の家に生まれてたら、鉛筆くらい普通に持てて箸も当たり前に使えて、勉強も出来たのかな。

友達がいて、好きな人がいて、毎日が楽しいのかな。

夢とかトラウマに悩まされることも無くて、オシャレして遊んで過ごせたのかな。



碧琉くんに会いたいなあ

全部、全部肯定して欲しいな。

"大丈夫だよ"って頭を撫でて欲しいな。

今までずっと言われ続けてきた嫌な言葉に、心が押し潰されそうだよ。

苦しいなあ
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