私が恋を知る頃に
すると、ふと穂海の目元に涙が滲んでいるのを見つける。
泣いてるの…?
指で涙を拭ってあげる。
また、嫌な夢見ていないといいなあ
そう思ったけれど、それは無理な願望だったようで、次第に穂海の息が乱れてくる。
すぐに落ち着くのなら、寝かせてあげたままでいいかとも思ったけれど、落ち着くどころか酷くなるばかりで、苦しそうだ。
肩を叩いて穂海を起こす。
「穂海、穂海、大丈夫?」
少しの間声をかけ続けていると、穂海はハッと目を覚ます。
「穂海、大丈夫?魘されてたけど、怖い夢見た?」
……コクン
穂海の表情は、何かに怯えているようで、目の奥が震えていた。
頭を撫でてあげたいけど、今の状態じゃ怖がってしまうかと思い、手を握ってあげることで留める。
「もう怖くないよ。大丈夫。」
……コクン
頷いたものの、穂海の表情は不安げなままだ。
声をかけても、余計気を遣わせてしまうだけだと判断し、手を撫でるだけにする。
穂海は、時折辛そうな顔をしたかと思うとほろほろと涙を流して、すぐにまた不安げな表情になる。
穂海の中で、何かを考え何かを消費している最中なのかもしれない。
なにかしてあげたいけど、きっと今はそっとしておいてあげるのが正解だろう。
穂海が疲れたように目を瞑るまで、俺は手を撫で続けた。