私が恋を知る頃に
「穂海、回診だよー」

そう言ってカーテンを開けて中に入る。

穂海は俺が来たのに気付くと、フッと目を逸らしてしまう。

「今日の体調はどう?痛いところない?」

そう聞くと、穂海は無言で小さく頷く。

「…大丈夫って捉えていいのかな?……とりあえず、診察してもいい?」

そう言うと、また穂海は小さく頷く。

「じゃあ布団めくるね。少し寒いかもしれないけど、ちょっと我慢ねー」

ドレナージの傷口や他に異常が無いか目視で確認した後に、事前に手で温めておいた聴診器を使い聴診もする。

「うん。大丈夫そうだね。胃の穴が塞がって炎症が収まり次第、この管抜けて退院も出来るからね。」

カルテに情報を入れつつ、そういうも、やはり穂海は頷くだけ。

しっかり聞こえてはいるのだろう、でも意図的に無視しているのか、何なのか…

それがひたすらに不安だった。
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