私が恋を知る頃に
碧琉くんが居なくなってしまう夢を見た事

そんな事ないって思いたいけど、まだ完全に信じきれないこと

信じたら、裏切られてしまった時が怖いこと

もし裏切られてしまったら辛くなるから、少し碧琉くんと距離を置きたいこと

あの日夢を見て思ったことを全て言葉にした。

ずっとそばにいて欲しいのに、距離を取りたいなんて矛盾していて、わがままな願望を、園田先生はゆっくり聞いてくれた。

「…なるほどね。そっか、それで今日は来た時から辛そうな表情してたんだね。」

「え?」

辛そうな表情なんか、してたっけ…

まったく記憶にないし、意識もしていなかった。

「無意識のうちに、心の声が表情に漏れていたのかもね。」

ふふっと笑った園田先生は、カルテに何かを書くと、また優しい顔で笑った。

「……穂海ちゃんはさ、どうしたい?今、そのことで悩んで辛いならできるだけ悩みは無くした方がいいけど、自分で解決してみる?それとも、僕の手を貸す?」

「…………」

私は答えに悩んだ。

…確かに、碧琉くんのことで悩んで辛い思いをしているのは事実だ。

心では、碧琉くんにずっとそばにいて欲しいのに、理性でわざと跳ね除ける。

その行為、言葉ひとつひとつが私の心を蝕んだ。

言葉を受け流す度、顔を背ける度、胸が締め付けられる思いがしていた。

同時に、お腹もキリキリと痛くて苦しかった。

でも将来自分が悲しい思いをしないために、と言い聞かせて我慢してきた。
< 208 / 282 >

この作品をシェア

pagetop