私が恋を知る頃に
「穂海ちゃんはさ、本当に瀬川くんと距離を置きたい?」

少し迷ってから小さく頷く。

「……本当に?何も考えずに、率直な気持ちはどうかな。」

……そんなの…

「…一緒に………居たい…」

そうだよ

なにも考えなくていいなら一緒に居たいに決まってるじゃん…

だって、だって…

碧琉くんの傍はいつも暖かくて、気が緩んじゃって、碧琉くんと一緒に居る時だけはどこにも注意を払わずに、安心できるんだもん。

何も出来ないのに、ひとつも責めないで私を認めてくれた。

そんな碧琉くんの隣は、とても心地よくてずっとここに居たいって願ってしまう。

「じゃあさ、今はそれでいいじゃん。」

「でもっ…」

ダメなの

それじゃダメ

怖いんだもん

いつか置いていかれることが怖いから、それなら自分から距離を置きたくて…

「…人を信じることが怖い?」

………コクン

「……そっか。…そうだよね。人を信じるのは怖い。……だって、相手の気持ちも未来もわからないからさ、わからないことは怖いよね。」

……コクン

「………穂海ちゃんにとって、瀬川くんは信用できる人?できない人?」

「……わからない…」

「今の段階でいいよ。今の穂海ちゃんにとって、瀬川くんは信用できる?」

私は少し迷ってから、コクリと頷いた。

「うん。なら良かった。…じゃあさ、とりあえず瀬川くんを信じてみたらどうかな。怖いのはわかる。…でも、とりあえず。瀬川くんが信用出来ないと思ったら距離を取ればいいし、違ったらずっと傍に居るままでいいんじゃない?」

そんなので、いいの?

だって、信じてきても急に裏切られたりしない?

「……ごめんね、ここからは少し僕の主観がはいるね。…少なくとも、瀬川くんは突然裏切って穂海ちゃんを置いていくようなことはしないと思うよ。……何言ってんだって思ったらごめん。でもね、瀬川くん、本気で穂海ちゃんを心配してたからさ。…入院中も、退院してからも、今回も穂海ちゃんが眠っている間ずっと傍に居たのは知ってる?」

ううん

首を横に振る。

そんなの知らない。

「…穂海ちゃんが知らない間も、瀬川くんはずっと隣にいたよ。だからって言ったら変だけどさ……、1回信じてみてくれないかな。…瀬川くんの本気、1度信じてみてほしい。」
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