私が恋を知る頃に
「……本当にいいの?…今思ったらさ、俺ずっと強引だったよな。……本当、ごめん。」

ウウンと首を振る度涙が出る。

違うのに、悪いのは私なのに…

「………碧琉くんの傍にいたい…、けど、……信じることが怖くて…」

「うん。」

「……こんなに、優しくしてくれるのに、まだ怖い自分が情けないの………」

「そんなことないよ。だってさ、人を気安く信用出来ないのはみんな同じだよ。少しずつ時間をかけて、信用出来るかどうか確認するんだ。……特に穂海はさ、今まで嫌な思いも沢山してきたから、他の人より少し時間がかかっちゃうだけだよ。だから、大丈夫。」

ああ、またそうやって私を認めてくれる…

私がかけて欲しかった言葉を言ってくれる。

「……碧琉くんは、私のこと…なんで、好きって言ってくれるの?」

そう言うと、碧琉くんはとても驚いたような顔をした。

「…………そ、それは…」

気まずそうな顔に、一気に不安になる。

「………ない?」

そう聞くと、碧琉くんはぶんぶんと首を横に振る。

「ち、ちがっ……恥ずかしい…だけだよ。」

そう顔を赤くすると、碧琉くんはもう一度私の手を握り直してから、真っ赤な顔でぽつりぽつりと話し始めた。

「……穂海の好きなとこは、いっぱいあるよ。…最初はね、ただ守ってあげたいって気持ちが強かった。でもね、だんだんと穂海と接しているうちに穂海に"愛"をあげられる存在になりたいなって思うようになったんだ。……穂海は、いつも儚くて、ちょっとのことで消えてしまいそうな、でも、だからこそ綺麗で…、たまに笑ってくれると、ドキッとするくらい可愛いんだよ。」

自分で聞いておきながら、途端に恥ずかしくなる。

私まで碧琉くんのが移ったように、顔が熱くなって胸がドキドキする。

「その笑顔が見たくて、沢山笑わせてあげたくて、ずっと傍で穂海を見ていたいなって思った。…だからさ……、告白した時に穂海も好きって言ってくれて、俺、本当に嬉しかったんだ。…舞い上がりそうって言うか……、もう本当に幸せで…」

心臓の鼓動がうるさい。

ドキドキ、ドキドキ

「穂海がいいなら、これからもずっと傍に居させて?」

そう笑った顔に、また涙が出た。

今度は辛い涙じゃない。

温かくて幸せな涙だった。
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