私が恋を知る頃に
……ピッ…ピッ…ピッ…
規則正しい心音
……なんとか持ち直した
安心したと同時に体の力が抜け床に膝をついた。
「……おつかれ。とりあえず、命は助かって良かった。」
「うん。本当にお疲れ様。瀬川くんが気付いてくれたのが早い段階で良かった。…思うところは沢山あるけど、でも命には変えられないから……」
俺は、そっと穂海の手を握った。
まだ冷たくて、それはさっきまで穂海が生死の境をさまよったことを示していた。
「……先生、俺…………何も出来なかったです……、ずっと穂海を近くで見てきたと思っていたのに…、絶対守るって言ったのに……、こんなことになるまで気付いてあげられなかった……」
「…………わかる…俺も同じこと経験したことあるから。」
控えめな声で清水先生がそう言ったことに驚き振り向く。
「……朱鳥もさ、知ってると思うけどしばらく精神的に追い詰められてた時期があって、その時あったんだ。」
先生は言葉を濁したけれど、何が"あった"のかは明白だった。
「……唐突、だよな。数時間前までは普通に話してたはずなのに、気付いたら自分で死のうとしてるんだよな。本当に唐突に、なんの前触れもなく…、前触れがあったのかもしれないけど本当に些細すぎて気付けないんだよ……」
ほんとその通りだ…
なんで?朝は普通に話してたのに……
「とりあえず、穂海ちゃんが目を覚ましたら精神科も交えて話してみよう。」
「はい……」
俺は力なく頷くしか無かった。