私が恋を知る頃に

穂海side

ずっと先生たちの声が聞こえ続けている。

ここは真っ暗で何も無い空間。

最初気付いた時は死んだのかと思ったけど、それも違うみたい。

時計がないからどれだけの時間が過ぎているかはわからないけど、定期的に話し声だけが聞こえてきた。

碧琉くんがずっと私に話しかけてくれているのも、話す度に泣いているのも聞こえていた。

でも、目を覚ます勇気がなかった。

一度、自分で死のうとした身だ、きっと起きたら怒られるしめんどくさい事になる。

それに、またあの辛い現実に戻るのも足が進まなかった。

ここは不思議と嫌なことを考えないで済む。

死んでいなくても、ここならずっと居てもいいかなってくらい心地がいい。

泣いて私の目覚めを願う碧琉くんには申し訳ない気持ちもあるが、今の私はここに居たかった。

つくづく悪い子でごめんね

私少し疲れすぎちゃったみたい
< 221 / 282 >

この作品をシェア

pagetop