私が恋を知る頃に
「…………のみちゃん、穂海ちゃん」

優しい声に起こされ、目が覚める。

「やっと、起きた。おはよう、穂海ちゃん」

…………コクン

目を擦りながら、体を起こしてみると、部屋には前に来てくれた三人の先生がいた。

「起きて早速でわるいけど、少し診察させてもらってもいいかな?」

病室によく来る、弟の先生が言う。

「………………いやって言っても、やるでしょ?」

「うーん、無理強いはしないけど、できるならしたいな。」

「……何するの?」

「体温計ってから、聴診するだけだよ。頑張れそう?」

そんなこと聞かれたって……

「わかんない……」

「すぐに終わるからさ、少しだけ我慢してくれないかな?」

「………………コクン」

私が小さく頷くと、先生はわかりやすく、嬉しそうに表情を変える。

「じゃあ、ちょっと近付かせてもらうね、腕、触るよ?」

コクン

怖くないのは知ってる、わかってるけど、でも、やっぱり無意識に緊張する。

体が、怖いのを覚えているから、勝手に強ばって、震える。

「碧琉、ちょっと待って。 穂海ちゃん、大丈夫?やっぱり、まだ少し怖いかな?」

…コクン

「わかった。じゃあ、一旦診察はやめようね。今日は、とりあえずお話だけしよう。」

「………ごめん…なさい……………………」

「大丈夫、気に病まなくていいよ。少しずつ慣れていってくれれば充分だから。」

お兄ちゃんの先生は、そう言ってニコッと微笑んでくれる。

「じゃあ、俺と清水先生は他の患者さんの回診に行ってくるから、何かあったら言ってね」

私を気遣ってか、弟の先生ともう一人の先生はそう言って病室を出ていった。
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