私が恋を知る頃に
「んー、話を聞く限りやっぱりちょっと鬱っぽいね。」
翌日、俺は園田先生にアポを取って急遽ながらも穂海との面談の予定を組んでもらった。
急だったから俺と園田先生の間でもまだ軽くしか話しも出来ておらず、とりあえずお昼の時間を使ってまずはミーティングをすることになった。
「この前の自傷行為もあったし、穂海ちゃんの状態を直接見ていないからまだなんとも言えないとこもあるけど、取り乱しっぷりとか突然泣いちゃうこととか、全体的に鬱な気持ちが広がってそうだね。」
「…はい。穂海、ずっと辛そうで……。何かのきっかけで、一時的に楽そうな時もあるんですけど、でも結局すぐ元に戻っちゃって…。根本的な心の原因を治さない限り、すぐぶり返しちゃうんじゃないかと思うんです。」
渡した穂海のカルテを険しい顔で園田先生は見つめる。
「………根本、か……、背景が背景だけあって難しいね…。なかなか、小さい頃から心に張られてきた根を除くのはしんどいから…。んーー、しんどいなあ、穂海ちゃんの辛い気持ちもわかるから余計心苦しいよ。……精神科やってるとさ、たまに穂海ちゃんみたいな症状の子に会うんだよ。…特に施設の子たちがうちを訪ねてくる時は大抵そういう理由だから。目に見えて辛そうな子も、表面上は何ともなさそうな子もいてね、でもみんな心に大きな傷を負ってる。子どもはすごく繊細なんだよ。…その繊細な心に沢山沢山傷をつけられて抉られて、取り返しのつかないことになる。僕たちも精一杯、その子たちが少しでも辛い気持ちを無くせるように努力するんだけどね、やっぱり深すぎた傷はいくら僕たちがあとから埋めても埋まりきらないものがある。まあ、その埋まりきらなかった傷と上手く付き合う方法を考えるのも僕たちの仕事なんだけどね。……でも出来たら、誰もそんな最終手段を取らなくていいようになればいいんだけど…ね。」
そう言った園田先生の表情は、笑ってるようにも泣いているようにも見えた。
翌日、俺は園田先生にアポを取って急遽ながらも穂海との面談の予定を組んでもらった。
急だったから俺と園田先生の間でもまだ軽くしか話しも出来ておらず、とりあえずお昼の時間を使ってまずはミーティングをすることになった。
「この前の自傷行為もあったし、穂海ちゃんの状態を直接見ていないからまだなんとも言えないとこもあるけど、取り乱しっぷりとか突然泣いちゃうこととか、全体的に鬱な気持ちが広がってそうだね。」
「…はい。穂海、ずっと辛そうで……。何かのきっかけで、一時的に楽そうな時もあるんですけど、でも結局すぐ元に戻っちゃって…。根本的な心の原因を治さない限り、すぐぶり返しちゃうんじゃないかと思うんです。」
渡した穂海のカルテを険しい顔で園田先生は見つめる。
「………根本、か……、背景が背景だけあって難しいね…。なかなか、小さい頃から心に張られてきた根を除くのはしんどいから…。んーー、しんどいなあ、穂海ちゃんの辛い気持ちもわかるから余計心苦しいよ。……精神科やってるとさ、たまに穂海ちゃんみたいな症状の子に会うんだよ。…特に施設の子たちがうちを訪ねてくる時は大抵そういう理由だから。目に見えて辛そうな子も、表面上は何ともなさそうな子もいてね、でもみんな心に大きな傷を負ってる。子どもはすごく繊細なんだよ。…その繊細な心に沢山沢山傷をつけられて抉られて、取り返しのつかないことになる。僕たちも精一杯、その子たちが少しでも辛い気持ちを無くせるように努力するんだけどね、やっぱり深すぎた傷はいくら僕たちがあとから埋めても埋まりきらないものがある。まあ、その埋まりきらなかった傷と上手く付き合う方法を考えるのも僕たちの仕事なんだけどね。……でも出来たら、誰もそんな最終手段を取らなくていいようになればいいんだけど…ね。」
そう言った園田先生の表情は、笑ってるようにも泣いているようにも見えた。