私が恋を知る頃に
コンコン

「穂海、入るよー」

少し緊張しているのを隠し、いつも通りを装って病室に入る。

この前のミーティングで園田先生と話した通り、今日は穂海と面談をしてからこれからの治療について話す予定だ。

きっと、長丁場になるだろう。

そう思って、俺も園田先生も時間はたっぷり空けてきた。

「あ、碧琉くん。……もう、面談の時間?」

「うん。園田先生もいらっしゃったよ。」

「そっか…」

浮かない表情の穂海。

今日、面談をするというのを予め穂海には伝えてあった。

重たい話になるから心の準備をしておいて欲しい、という事だったんだけど……

まあ…、でも難しいよね……

心の準備と言ったって、このことについては穂海は話したくないだろうし、触れて欲しくない部分の一つだろう。

浮かないのも当然か…

「穂海ちゃんおはよう。今日は、よろしくね。……って言っても、まだ気が向かない感じかな?もうすこし、時間おこうか?」

園田先生が穂海にそう問いかけると、穂海は少し悩んでから首を小さく縦に振った。

「うん、わかった。じゃあ、僕はもう少ししてから出直すね。…碧琉くんはどうする?」

俺も出ていくべきか、少しでも穂海の緊張をほぐすためにもここに留まるべきか悩んで穂海に視線を投げかける。

穂海は、俺と目が合うと、また少し悩んでそれから小さな声で

「碧琉くんは…居てほしい……」

と恥ずかし気に目線を落とした。
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