私が恋を知る頃に
「穂海ちゃん、今日はどこまでなら近付いても怖くない?」

「…………そこ」

ベッドの周りのカーテン辺りを指さすと、お兄ちゃんの先生は椅子を持ってきてそこに座った。

「よし、じゃあ、改めておはよう!」

「……おはよう…」

「昨日はよく眠れた?」

昨日………必死に思い出そうとするけど、何故か昨日のことはよく思い出せない。……確か、お昼ご飯を食べたあと眠たくなって…その後は……

「…………覚えて…ない。」

「うーん、覚えていないってことは、寝てたってことかな。きっと、ぐっすり眠ってたんだね。よかった。」

「……なんで、先生が喜ぶの…」

「え?だって、この前会った時は目の下にくまが出来てたからさ、あの時はあんまり眠れてなかったんじゃない?」

「………………」

図星すぎて言葉を失う。

あの頃、知らない間にここに連れてこられて、パニックになってよくわからない注射を打たれて、その後は急に眠たくなるんだけど、その後目が覚めてからは、寝るのが怖くて、無理にずっと起きていた。眠ったとしても、1時間程度で目が覚めてしまってたから。

「よく眠れていなかったってことは、何か原因があったんだよね?…でも、今、よく眠れているってことは、その原因が取り除けたってことだから、少しでも穂海ちゃんが楽になってくれたなら、僕は嬉しいんだ。」
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