私が恋を知る頃に

碧琉side

結局、今日面談はあまり出来なかった。

穂海のパニックが悪化してしまい、薬を使わざるを得ない状況になってしまったからだ。

鎮静剤で穂海は落ち着きを取り戻すと同時に、少し意識が朦朧とし、あまり話せる状況ではなかった。

だから、パニックを起こしたことについて少し声掛けをし、予定よりもかなり早く切り上げ、また別の日に本格的な面談は移動になった。

「次は、心の準備の時間を設けると、少しまた今日みたいに考えすぎてしまうかもしれないから、すぐ面談に入るようにしよう。」

「…そうですね、考える時間があると悪い方向に不安が大きくなっているように見えました。面談に入るハードルが低くなると良いんですけど……」

うんうんと園田先生は頷く

「ちゃんと見えてるね。そうだね、やっぱり人間は一度不安を考えてしまうと悪い方へ方へと思考が進みやすいから、考える時間を設けない方が良さそうだね。あと、ハードルを下げるために、次はお菓子とお茶をもっていって、最初は雑談から入ろうかな。少しでもリラックスしていた方が本音も引き出しやすいしね。」

「はい。お願いします。」

心の方は俺は専門ではないし、知識と経験が圧倒的に不足している。

だから、この分野に関しては園田先生にお任せしたい部分もあるんだけど……

「先生」

「ん?」

「俺にも、何か出来ること、ないですか?事前準備でも、当日の事でも、後日のケアでも…。俺、もっと知りたいんです。出来ること、増やしていきたいんです。」

穂海の担当医として、彼氏として、何もしないで黙って見てるだけ、はできない。

きちんと責任をもって知りたかった。

「もちろん。じゃあこれからそれも含めミーティングしよっか!」

そう明るい笑顔で答える園田先生に、また強い信頼感を抱いた。
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