私が恋を知る頃に
「多分、大丈夫……」

言葉ではそういうものの、穂海の表情は曇っていて不安な様子が見て取れる。

「うん、じゃあ少し面会してみようか。大丈夫だよ、何かあったらすぐ呼んで?俺、一応ナースステーションで待機してるから。」

そう言うと、穂海は少し安心したように息をついて頷いた。

「私…、上手に喋れないかもしれない……けど、がんばる…。」

その言葉に、穂海の抱えていた不安の要因に2つ目があったことを知る。

友達との会話を、義務的に捉えちゃってるのかな……

「何も、頑張らなくていいんだよ。気張らないで、友達と話すことを楽しめばいいの。大丈夫。お見舞いに来てくれるってことは、穂海のこと大切に思ってくれている証拠だからね。」

そう言うと、穂海はまだ少し不安気ながらもしっかりと前を向いて頷いた。

「じゃあ、呼んでくるね。少しまってて。」

そう言って俺は病室を出た。
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