私が恋を知る頃に
突然のことに、何が何だかわからなくなっていると、ショートヘアの女の子がプッと吹き出した。

「あはっ、でた冴子(さえこ)の一方的な押し付け。」

「さえちゃん、いつも急だよね。」

ポニーテールのは冴子ちゃんって言うんだ。

しかも、2人の言いようからして、あれいつものなんだ……

私が驚きを隠せずにいると、ショートヘアの方の女の子が笑いながら説明をしてくれた。

「今出てったのが冴子。口悪いし、問題児だけど悪いやつじゃないから。あれでも、あいつなりの気遣いなんだ。」

「さえちゃん、勘違いされがちだもんね。……というか、私まだ自己紹介してなくない?」

「まじ?してたと思ってた。」

そう言うと、ショートヘアの女の子は改めて私の方に向き直る。

「あたし小夏。こっちは、鈴音。うちらは幼なじみっつーか、小さい時から施設にいて自然と仲良くなった?みたいな。」

「鈴音です。ごめんね、施設にいた頃あまりお話出来なくて。あの時、ちょうどテスト期間で少し忙しくて。これからよろしくね、穂海ちゃん。」

小夏ちゃんに、鈴音ちゃん……

最初は、少し怖かったけど、こうやって話してみて、全然印象が変わった。

「私こそ…よろしくお願いします……」

そう言うと、小夏ちゃんはニカッと笑って手に持っていた紙袋をベッドサイドテーブルに置いた。

「これ、お土産。てか、冴子の言う通りまだ穂海顔色悪いし、うちらもうそろそろ帰るね。安静にして、早く体治しなよ。」

「うん。そうね。まだ、具合悪そうだし、ゆっくり体休めてね。まだ、話したいことあるけど、それは今度の機会にしよ。」

優しい気遣いに胸が暖かくなる。

そのまま、少し感傷に浸っていると、2人はもう既に帰ろうとしてしまっていて、思わず呼び止める。

「まって!」

「ん?」

振り返った2人に、今の暖かい気持ちを伝えたかった。

「き、今日は、ありがとう。…みんなが良かったら、また話したい…です……。」

そう言うと、プッとまた2人が吹き出す。

「改まって何?もちろんまた話そ!」

「あと、敬語もやめてよ。私たち、もう友達でしょ?」

”友達”そう言って貰えたことが、とても嬉しかった。

また胸がじーんと熱くなる。

「うん!…またね!」

そう言って手を振って2人を見送ることが出来た。
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