私が恋を知る頃に
病室から残りの二人が出てきて、病室の前で待っていた女の子と合流し帰って行くのを見送ってから、俺は穂海の病室へ向かった。

ノックしてから入ると、穂海はベッドの上でもらったのであろうお土産の小袋を嬉しそうに眺めていた。

「穂海、お疲れ様。どうだった?」

そう聞くと、穂海は面会前の緊張した面持ちとは打って変わって、解れた表情で笑みを浮かべた。

「みんな、凄い優しかった。私の体調気遣ってくれて、お土産まで貰っちゃったし、それに…私のこと”友達”っていってくれて……」

友達、か。

穂海にとっては、凄い嬉しい言葉だろうな。

これから一緒に過ごす仲間にそう言って貰えたことは、穂海にとって大きな安心材料にもなるだろうし。

その穂海の嬉しげな笑顔に、俺まで嬉しい気持ちになった。

「よかった。穂海、最初すごい緊張してたから、心配してたけど要らない心配だったみたいだね。」

「うん!早くまた、みんなと話したいな。」

そういった穂海は、久しぶりにみる安心しきった笑顔を浮かべていて、その表情に、安心すると同時に胸がドキッとした。

「やっぱり、穂海には笑顔が一番似合うね」




「……へ?」

穂海のその驚いたような声にハッと我に返る。

俺、今なんて言った?

……なんか、凄いくさいセリフを口にしてたような…

一気に恥ずかしくなって顔が熱くなるのを感じる。

「あ、あの…今のはなんて言うか、その……む、無意識で!だって、穂海が凄い可愛かったから……つい、無意識に口からこぼれちゃって!!」

焦って言い訳を口にするも、これじゃあ墓穴を掘ってないか??

焦った自分の中で冷静な自分がそうツッコミを入れる。

ああ、穂海の前ではスマートで居たかったのに、心の声がダダ漏れだよ!!

こんなの、ドン引きだよね……

「…………」

「…………」

お互いに気まずい沈黙が流れる。

うう…、穂海怒ってるかな……

そう泣きそうになっていると

「………恥ずかしい…」

小さな声で確かにそう聞こえた。

見ると、俺と同じように耳まで真っ赤に染めた穂海の姿。

………やばい、可愛すぎる…

思わず、そのまま穂海を抱きしめた。
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