私が恋を知る頃に
「院内学級……」

「うん。うちの病院は、病院の中で勉強できるように院内学級を設置しているんだ。だから、穂海もそこに行ってみない?っていう提案だよ。」

院内学級の話を俺の口から穂海に言うと、穂海の表情は少しまた曇ってしまった。

「これはあくまで提案だよ。穂海ちゃんが嫌だったら、無理に行く必要はないからね。」

園田先生がそう付け加えていうと、穂海はなにか言いにくそうに口をもごもごさせた。

「……どうした?何か不安とか、質問あれば何でも言ってくれていいんだよ。」

そう言うと、穂海は少し顔を上げておもむろに口を開いた。

「わ、私……勉強、出来ないから…。多分、怒られる……。教えられても……わかんないし…、字も、汚いし……」

そう言った穂海の瞳には怯えの色が浮かんでいた。

そっか、過去の体験から、学校にもトラウマを持っているのか。

全員が全員、そう言う先生じゃないんだけどな……

どうやって、誤解を解いたら良いだろう……

「じゃあさ、一回、見に行ってみない?」

園田先生の優しい声に思わず顔を上げた。

確かに、見てもらうのが一番手っ取り早い。

「ここの病院で勉強を教えてくれる先生はみんな優しいこと、見てもらったらわかると思う。ここには、色んな病気を抱えた子たちがいるからさ、出来る子も出来ない子もいること、先生はよく分かっているんだよ。」

園田先生はそう言うと、タブレット端末を取り出して院内学級の時間割を穂海に提示した。

「どの時間が見てみたい?今度、穂海ちゃんが行ってみたいと思うやつを一緒に見に行こう。」

穂海は少しだけ考えてからひとつのコマを指さした。

「数学……。私…全然わからないから……、聞いてみたい。」

「いいね。じゃあそれにしよう!」
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