私が恋を知る頃に
「穂海、緊張してる?」

部屋を出てまず言われたのがそれ。

やっぱり、顔に出てたかな……

「うん…ちょっと……」

そういえば、碧琉くんは優しい顔のままで「そっか、そっか。」と背中を撫でてくれた。

「向こう着いても、怖くなったらすぐ教えてね。無理はしないで、途中で抜けることもできるから。」

コクリと頷けば碧琉くんは少し心配そうながらもまた優しく背中を撫でてくれた。

そうこう話しているうちに、院内学級は思っていたよりもすぐ近くの部屋だったようで、だんだん子どもたちの声が聞こえてくる。

開放された扉から部屋の中を覗けば、そこには優しい木目調の部屋に5つほどの机と椅子、それから部屋の前の方にホワイトボードが置いてあった。

「今は休み時間みたいだね。先生呼んでくるから、少しここで待ってて。」

そう園田先生は先に教室に入っていく。

「あ!ひかるせんせーだ!」

「ひかる先生やっほー。何しに来たの?」

「こんにちは~、今日はちょっと見学だよ。楸先生いるかな?」

「先生はね~」

部屋の中からは、仲良さげな声が聞こえてくる。

園田先生、他の子どもたちとも知り合いなんだ……

慣れた会話の様子に少し驚きつつも、その会話の様子が楽しそうで少し心が落ち着いてくる。

そうしてしばらく待っていると、園田先生が教室から出てきた。

そして、その後ろには髪の毛を後ろで1本に縛った明るそうな女の先生。

「こんにちは。穂海ちゃんかな?」

優しい笑顔にとりあえず安心して、私は頷きを返す。

「私は、楸 愛依って言います。今日はよろしくね!」
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