私が恋を知る頃に
ドキドキしながら教室に入った。

入った瞬間、私に目線が集まる。

「…………っ」

思わず、怖いって思ってしまった。

何か、された訳じゃないけど、今までの経験から…こういうのは、苦手で……

「…大丈夫?」

その声に顔を上げると、私のことを心配そうな顔で見つめるニット帽の女の子。

まだ緊張と怖さは残っているものの、こくりと頷きを返すと、女の子は微笑んで自分の隣の席を引いた。

「よかったら、隣、どうぞ。」

……初めて会ったのに、どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう。

不思議に思いつつも、ぺこりと頭を下げて隣の席に座らせてもらった。

持ってきたノートを開いて、ペンを出した所でさっきの楸先生が前に出てくる。

「さて、じゃあ3時間目はじめます。この時間は算数と数学ね。いつも通り、プリント配っていくから、それぞれ解いてください。30秒考えてもわからない問題が出てきたら、手を挙げて教えてねー。」

「はーい」

みんなで、同じ授業じゃないんだ と驚きつつも、周りを見るとその理由がすぐにわかった。

同じような歳の子ばかりじゃないんだ。

見るからに、小学校の低学年のような子もいれば、中学生くらいの子もいる。

一人一人、やる内容が違うのかな……

私は、何やるんだろう……

年相応の勉強は、多分できないけど……

少し不安に思っていると、少ない人数だからか、直ぐに先生が私の席の前まで来ていた。

「はい、これ穂海ちゃんの分。今日は、はじめてだから色々な学年の問題が入ったプリントにしたよ。後ろの問題になるほど、段々難しくなるようにしたから、わからなくなったら手をあげてね。」

先生に貰ったプリントにさっと目を通す。

最初は足し算とか、引き算、かけ算、わり算…あと、時計の計算とかもある。

プリントの裏を見ると、見たことはあるけど、中学の時にわからなかった問題ばかり。

……解けるやつから、解いてみよう。

とりあえず、ペンを握った。
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