私が恋を知る頃に

碧琉side

穂海はぽつり、ぽつりとこぼすように一つずつ考えていたことを話してくれた。

俺は、もしかすると穂海のことを大きく勘違いしていたのかもしれない。

穂海は、俺が思っているよりも、ずっと大人で、ちゃんと自分の未来、自立に目を向けていて、だからこそ不安になってしまうことが多いみたいだった。

体の調子が安定してきて、環境的にも生命の危機から逃れられたことで、きっと心にも余裕が出てきたからこその悩みだろう。

「……私ね、居場所がなくなることが…怖いの…………。今の私は、何も出来ないから……居場所が少なくって…、あ、碧琉くんの側が嫌ってことじゃないよ!……じゃなくて、……すごく、不安になっちゃうの…………。碧琉くんがいないと、何も出来ないような私は……碧琉くんの側でも…………居ちゃ、ダメなんじゃないかって思っちゃって……。」

ここで、「居ていいんだよ」と返すことは簡単だった。

……けど、穂海が今、こうして相談してくれているってことは…きっと、それ以上別の答えを欲している、そう直感でわかった。

「……居場所がなくなることを考えるとね、胸がキューってして…、ざわざわ、して……眠れなくなるの。……居場所ないくらいなら、……私………………」

その先に穂海が何と言わんとしているかも、またわかってしまった。

ここまで強く、自分の”居場所”を求めるのは、きっと、これまでの経験から…だろう。

穂海にとって安心する”居場所”、ずっと居ていい”居場所”、それが穂海には必要なんだろう。

俺は、穂海の背中を擦りながら考え続けた。

どう言えば伝わるか、穂海に響いてくれるか。

考えに考えた末、ゆっくり口を開いた。
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