私が恋を知る頃に
私は、私の人生を歩んでいい。

その言葉が強く頭に残っていた。

急変した患者さんが出ちゃったからって、碧琉くんはあの後すぐに病室を出ていってしまった。

けど、不思議と、寂しさだったり不安はなくて

でも、なんだか眠れる気持ちでもなくて、私はしばらく暗い窓の外を見ながら一人考え事をすることにした。

夢みたいに心がポーっとする。

なんだか、最近変だ。

何もかも自分じゃないみたい。

……まあ、少し前と比べて状況が全然違うから、っていうのも大きいけど

でも、本当に……




1年前の私には考えられないだろう。

毎日ご飯が出て、シャワーを浴びれて、手や足が私に向かってこなくて、暖かくて心地の良いベッドで眠れて

私の体調を心配してくれる人がいて、私を側にいてほしいって言ってくれる人がいて、泣くことを許されて、私が傷つけられることを怒ってくれる人がいる。

贅沢だ。

私には、贅沢すぎるくらい。

この生活が怖くなっちゃうくらいに、毎日が穏やかで、心地よくて……

これが、普通の人の当たり前、なのかな。

やっと私、スタートラインに立てたのかな。

幸せになろうとして、いいのかな……

まだ怖い気持ちは胸の中に残っている。

けれど、それよりも碧琉くんの言葉が、他の先生たちの存在が背中を押してくれる。

ああ、私、本当に……居ても、いいんだ。

許されるんだ。

それが、ただ、ただ、嬉しくて

今日はなんだかいつもより、星が綺麗に見えるような気がした。
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