私が恋を知る頃に
数日後、清水先生が言ってた通り穂海ちゃんのオペについてのミーティングが開かれることになった。

執刀は佐伯先生、第一助手が清水先生で、第二助手が俺。

俺にとっては、初めての大きな手術になるから、かなり緊張する。

「じゃあ、始めようか。患者は、悠木 穂海さん17歳。術式は、心臓弁置換術でいいね。ただ、穂海ちゃんの場合、先天的に内臓が全て逆転してる…所謂、内臓逆位の状態だから、オペ自体は普段の心臓弁置換術より難しくなる。ここまでは大丈夫?」

「えっ、穂海ちゃんって……」

「あれ?気付いてなかった?ごめんね、先に言っておくべきだった」

内臓逆位、それは何らかの原因で先天的に体に入っている臓器が全て鏡写しにしたように入っている奇病。通常は、何も体に支障はきたさないんだけど、今回のように手術となると、血管なども全て逆に配置されてるため、手術の難易度が高くなる。

…………それで、佐伯先生を呼んだのか。

「まあ、ここまで言ったらわかると思うけど、今回の難所はここだね。陽向を呼んだのもこのため。穂海ちゃんの心臓は通常の成人女性のサイズよりかなり小さめだし、逆転してるってなると、結構細かい作業が必要になってくる。かなりの長丁場になるのも覚悟しないとね。」

こんな難易度の高い手術の第二助手を任されたのは光栄だけど、その分プレッシャーもかなり大きい。

今日のミーティングで話を聞いて、医局戻ってからいっぱい練習しなきゃ……

先生達に置いていかれないように必死にメモを取りながら話を聞く。

この手術は何としても成功させなくちゃ。

だって、これは穂海ちゃんの命がかかった大きな手術なんだから。

そう思うと、より一層緊張が高まるばかりだった。
< 45 / 282 >

この作品をシェア

pagetop